推薦歴史マンガ...第01回-怪しき才人-

『墨戯王べいふつ』表紙
鼻を伸ばして名品に見入るべいふつ
皇帝の名品コレクションに
鼻を伸ばして見入るべいふつ
名品の為には出資を惜しまないべいふつ
名品獲得のためには
出資を惜しまない様子のべいふつ

『墨戯王べいふつ』(佐々木泉)

茶人・古田織部の数寄者としての生き様を濃い口に描いた
『へうげもの』が、物欲漫画として話題になっておりますが、
この『へうげもの』の連載が開始される約3年前に、
ビッグコミックオリジナル増刊にて、熱狂的なコレクターを
主人公とした 『墨戯王べいふつ』が連載されてました。

舞台は宋代末期、中国史上屈指の芸術家であり書家でもある
八代皇帝・徽宗(『水滸伝』の悪役・高俅を重用した人)が、
即位して間もない時代。
書画学博士として朝廷に招かれた米芾(べいふつ)が主人公。

米芾(以下:べいふつ)は宋代の三大書家の一人とされた
書画の達人であり、優れた書画鑑定技術も有していた人物。

さらにその名声の高さに匹敵するほどの蒐集癖を有しており、
コレクションの種類は名画・名書・名品さらには奇石と幅広く、
人から書画を借りた際には、自分の手元に留めておこうと、
自ら作った贋作を返すなど、手段を選ばない程のコレクター。

作中では、そのようなべいふつが流麗な絵柄で丁寧に描かれ、
かつコミカルに動かされているため、書画骨董収集という、
やや固めの題材を非常に読みやすく仕上げられております。

毎回、話の中に機知に富んだ「返し」が仕掛けられているのも、
面白さの1つ。「おおっ、なるほど!」と膝を打つような話が
お好きな方には特に読んでもらいたい作品です。

メインキャラクタに風流人で一級の芸術家でもありながら、
宮中を抜け出して城下を徘徊する皇帝陛下や、
べいふつのライバルコレクターである画家の王詵(おうしん)等、
味わいのある人達。殆どオヤジばかりたくさん・・・・なんだけど、
妓女の李師師や美人弟子でオリジナルキャラの桃葉さんで、
暑苦しい人間模様にならぬ様、気配りがされております。


蘇東坡に贋作を見破られる
蘇東坡に贋作を見破られるべいふつ

私のお気に入りは第四話「蘇東坡」
宋代を代表する詩人で、書画や文にも
優れていた蘇東坡の墓から盗まれた絵が、
生前交際のあったべいふつの家から見つかり、
逮捕されてしまうところから話が始まる。

蘇東坡の亡骸と共に埋葬された名画は、
自分の贋作だと主張するべいふつ
名画に隠された過去の因縁とは・・・・

と、戦や策に彩られた三国志や戦国時代とは、かなり趣の異なる作品ですが、
宮中ので自分の物欲に身を委ね、謀略さながらに機転を働かせる様子等、
是非とも一読していただきたい作品。

作者の佐々木泉先生は、現在メディアファクトリーの「コミック三国志マガジン」にて
三国志の魯粛を主役にした漫画を連載中。
先日、ついに単行本『江南行』が発売されましたので、こちらも合わせて推薦いたします。

【関連】

Sasaki Izumi MOOR
作者・佐々木泉先生のサイトです。
ブログもありますので、作品の感想や励ましのメッセージを送ってみては?

『墨戯王べいふつ』(佐々木泉)
『墨戯王べいふつ』
米芾(べいふつ)1051〜1107年
宋の時代の書の三大書家の一人

分析的な書画鑑定を得意とする
米芾が、名品を求めて西へ東へ
己が趣味のため? 書画を愛するため?
今日も宮中を跋扈する
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『江南行』(佐々木泉)
『江南行』
群雄割拠、戦乱の世を迎えていた三国時代の呉の国において、
その柔軟な考えと温和な人格で頭角を現す事になる男・魯粛
武勇と戦いのみが注目されがちな三国志の舞台で、
暮らし、生きる人々の姿と思いを描くが描かれた、
静謐で優しい三国志物語。
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