「白沢図」について

白沢(白澤)は中国の霊獣で、『三海経』に、「東望山(江南省)
にいる獣、その名を白沢(白澤)という。よく言語をしゃべり、
王者が有徳であれば出現する」とある。

 また、『黄帝内伝』には、『黄帝(中国古代伝説の王で三皇
五帝の一人である軒轅)は、東方へ視察の行幸をして海岸に達し
そこの桓山という山に登ると、白澤という神獣に出会った。
この獣はよく人間の言葉を話し、森羅万象のありとあらゆる全て
の事を知っていた。そして白澤によると、精気が凝ってものの形
をなした精や、遊魂が変化して生じた妖怪は、およそ一万一千
五百二十種ほどもあるという。そこで黄帝は白澤が語った内容に
基づいて、図に描いて天下に示すように命じて書籍になったもの
が『白沢図』であった」とある。

 『白沢図』は世界最古の妖怪図鑑ともいうべきもので、これに
よって様々な妖怪について知ることができるようになり、その
結果、妖怪に出会わないようにしたり、その害を除くことが可能
になったという。唐代の『隋書』経籍」や、北宋代の『新唐書』
「芸文志」には、この書の実在が記録されているが、その原書は
散逸して現存しない。     「百鬼解読」(多田克巳)より

白沢


                白
                澤
 今               
 昔               
 百               
∧鬼    靡 避 白 黄   
鳥拾 摸  所 怪 澤 帝   
山遺 捫  不 除 一 東   
石下 窩  偏 害 見 巡   
燕之 賛            
∨巻               
よ・               
り雨               

 鳥山石燕が描いた百鬼夜行シリーズ(『画図百鬼夜行』、『今昔
画図続百鬼』、『今昔百鬼拾遺』)の最後を飾る妖怪が「白沢
(白澤)」である。その今昔百鬼拾遺に、「黄帝東巡し、白沢一たび
見る。怪を避け害を除き、靡く所偏せず。摸捫窩賛(ももんがさん)」
とある。「靡く所偏せず」とは、「従うところには争い事はなくなる」
という意味。

 石燕が自分の妖怪図鑑である百鬼夜行シリーズ三部作の最後に
「白沢」をもってきたその理由は、世界最古の妖怪図鑑というべき
『白沢図』にあやかって、有終の美を飾ろうとする意図があった。
だから文の最後に摸捫窩賛(妖怪モモンガの賛辞)などと記してみた
のである。

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